統合報告書の発行を契機に取り組む
グループ3,000人のサステナビリティ意識向上 PROJECT

H.N

サステナビリティ推進室
担当業務:サステナビリティ関連業務全般
2014年入社 文学部卒

埼玉県出身。入社後、羽田エアポートエンタープライズへ出向して特選洋菓子館に勤務。2017年に日本空港ビルデングに復帰し、リテール営業部に配属(現 業務課・飲食事業部 飲食事業課)。2019年7月より3年間、京浜急行電鉄株式会社に出向し、サステナビリティ関連業務を担当し、統合報告書の制作も経験した。2022年7月に出向復帰し、当社サステナビリティ推進室に配属。サステナビリティに関する情報開示の一環として、当社として初めての統合報告書の制作を担当した。

持続可能な社会への貢献を伝えるために
マルチステークホルダーへ統合報告書を発行

近年、SDGsやサステナビリティへの社会的関心が高まる中で、企業価値を測る指標においても売上や利益といった財務情報だけでなく、人財育成や社内環境の整備、社会課題に対する取り組みといった非財務情報に注目が集まっています。

当社はこうした時代の流れに応えるように、「公共性と企業性の調和」という基本理念のもとに、事業を通じて社会課題の解決に向けた取り組みを進めてきました。しかし、その情報をステークホルダーの皆様に伝えきれていないと感じていました。かつての日本では「陰徳善事」といって、人知れず善い行いをすることが美徳とされてきましたが、ネットワークの発達した現代において企業価値を高めていくためには、良い取り組みを積極的に開示し、発信していく必要があります。

当社グループは2023年に創立から70周年を迎えたこともあり、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションをより深めるために、初めての統合報告書を制作・発行しました。財務情報と非財務情報を統合してレポーティングすることで、当社がどのような戦略に基づいて事業を展開し、自社の持続可能な成長と社会に対する価値創造を実現しているかをストーリーとして提示するためです。統合報告書の前半を占める財務情報や経営戦略のメインターゲットは株主・投資家の皆様ですが、後半部分には当社のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを記載し、お客様や取引先への情報発信にとどまらず、リクルートにも活用できるマルチステークホルダーを意識した構成にしました。

株主・投資家からの反響だけでなく
社内の情報発信・共有にも大きな効果が

2023年1月に統合報告書の制作がスタートし、サステナビリティ推進室のメンバー3名で企画から情報収集、取材、原稿作成、部署への確認、校正など制作実務を担当し、約10カ月の長期プロジェクトとなりました。私は2019年から2022年まで出向していた京浜急行電鉄で統合報告書の制作にも携わらせていただいたので、その経験は大いに役立ちました。

統合報告書の制作が当社にとって初めてだったので、新しいものをゼロから創るためには、まずどのようなものであるのかを理解してもらうことが必要でした。なぜ、何のために統合報告書を作るのかを社内の皆様に説明するのは苦労しましたが、少しずつ社内の情報開示に対する意識の高まり、姿勢の変化を感じられるようになりました。サステナビリティと聞くと、新しい、馴染みのない言葉だと思われるかもしれませんが、当社がずっと続けてきた取り組みの延長にあるものです。わからないものだとスルーせずに、社員一人ひとりが「自分ごと」として主体的に行動を起こせる環境をつくることが、当室の役割であり、使命であると思っています。

そういった意味で、統合報告書は社外に情報を発信するだけでなく、社内で情報を共有する役割も果たしています。経営戦略や価値創造プロセスを理解することで、自社のアクションが明確になり、他のグループ会社がどのような取り組みをしているのかを知れば、自社でもやってみようという動きに繋がっていく。そのためにグループ内のさまざまな取り組みにスポットライトをあててPRするように心がけました。

2023年11月に統合報告書を発行すると、社内外から大きな反響が寄せられました。IR説明会で機関投資家の方から掲載内容について質問されたり、非財務情報のさらなる情報開示を求める要望をいただいたり、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションツールとして機能していることに喜びを感じています。

想いを込めたストーリーを伝えることで
共感と協業のネットワーク構築に寄与する

統合報告書の制作過程でグループ会社や他部署の方々から話を聞き、多くの人々の仕事に取り組む姿勢や熱い想いに触れることができました。統合報告書によりその想いを含む当社グループの社会課題に対する取り組みを発信し、共感と協業のネットワークの構築に貢献したいと考えています。

空港業界には脱炭素をはじめさまざまな課題があると認識しています。航空ネットワークを持続可能なものにするという大きな課題は、当社だけで解決できるものばかりではありません。さまざまなステークホルダーと課題を共有し、お互いの知識や技術、アイデアを動員して、力を合わせることが重要だと思っています。統合報告書の特集として取り上げた「terminal.0 HANEDA」は、そうした取り組みの1つといえるでしょう。terminal.0 HANEDAは、2024年1月に「HANEDA INNOVATION CITY」に開設した異業種連携の研究開発拠点で、蓄積した実証結果や技術を空港へと広げていくオープンイノベーションを推進する場となっています。

こうした取り組みをプレスリリースでしっかりとPRすることに加えて、中長期的にお客様や社会にどのような価値を提供していくのか、ストーリーとしてしっかり伝えていくことができる1つの「場」として統合報告書があると思っています。

統合報告書の発行は、サステナビリティ推進室にとって一つのゴールではありますが、会社としてはスタートであると思っています。私たちはそこに留まることなく、グループ3,000人のサステナビリティ意識の向上に使命と責任を持って取り組んでいきます。まずは2025年までに経営層や従業員の判断基準にサステナビリティの概念を浸透させるという目標のため、統合報告書等での情報開示を充実させるとともに、発行を1つの皮切りとしてさらなる浸透に努めてまいります。